牛沢が実況した神ゲーの中に、NieR Replicant ver.1.22(ニーアレプリカント)というゲームがあり、その内容があまりにも考えさせられるもので、心打たれるゲームとして話題となりました。
ダークファンタジーで神秘的、終末的な世界観が魅力的で、その雰囲気と設定の深さから、未だにファンの間で考察が盛んなゲームです。
BGMの世界観もこだわり抜かれていて、名作ドラゴンクエストやファイナルファンタジーとも肩を並べ、東京オリンピックの行進曲にも採用されるほどでした。
牛沢が実況の中で、ストーリーの主軸となる【ゲシュタルト計画】や【黒文病】について簡単に説明はしていましたが、もっと深く知りたいと思われる方も多くいたのではないでしょうか。
ストーリーを改めて振り返り、ゲシュタルト計画の目的について再考察してみましょう。
ニーアレプリカントの概要とストーリー
ヨナや村人を襲う黒文病について
ストーリー前半は、【黒文病】という不治の病にかかっているヨナを救うニーアの旅の話です。
黒文病は、絶対に治らない病気とされており、かかってしまうと死を待つのみというとても恐ろしい病気でした。
身体中に呪文のような文字が這い記され、重症化すると寝たきりを余儀なくされます。
ヨナを愛してやまないニーアは、苦しむ妹をただ見ているだけの自分も許せず、絶対に治らないと言われているヨナの黒文病を治すことを約束するのです。
【白の書】シロとの出会い
ニーアはある時、村の近所にある石の神殿で、喋る本「白の書」と出会います。
村の長であるデボルとポポルが話した「白の書」についての言い伝えから、ヨナを救うための大きな手掛かりを得ます。
堅苦しい書物のイメージですが、シロはとても愛嬌のあるキャラクターで、ニーア達の旅には欠かせない紙媒体となりました。
半身がマモノに憑りつかれているカイネと出会ってからは、2人のやりとりを微笑ましいと思う人は多かったことでしょう。
ニーアレプリカントの物語本編は実はここから
困難ながらも旅を続けるニーアでしたが、ヨナは魔王と呼ばれる人間の形をしたマモノにさらわれてしまいます。
旅で出会った仲間とニーアは、ヨナを救うために旅立つこととなります。
デボルとポポルによって手掛かりを得て、石の神殿の扉の先へと進むため、世界各地を巡っていきます。
と、ここまでは長編RPGとしては珍しくない展開です。
察しのいいプレイヤーはデボルとポポルの言動の違和感に気づいた人もいたことでしょう。
カイネがマモノを封印するためエミールの力で石化し、エミールの過去も浮き彫りになるなど、仲間の過去をも知ることで物語の背景がさらに鮮明になっていきます。
それまでに張り巡らされた伏線や設定も大きく露出し、プレイヤーの持っていた印象もすべて翻されることとなります。
ここにくるまで長かったと感じるプレイヤーも多かったと思いますが、実はここからが山場。
ニーアレプリカントには、ゲーム本編では説明されていない莫大な裏設定が存在しています。
終盤になるにつれて魂の存在等、徐々に非現実の抽象的な概念が出てくるようになります。
そういったことからストーリーの最終盤は、深く考察しないと理解できない複雑さとなっていくため、ストーリーを追いながら、裏設定も交えて分かりやすく考察し、理解していきましょう。
本筋と表裏一体の設定「ゲシュタルト計画」の全貌
ストーリーの最終版、世界を巡って鍵を手に入れ、ニーアたちは石の神殿の奥へと行けるようになります。
そこにはヨナをさらった魔王が居ました。
ヨナを救うべく魔王を倒そうとするニーアたちを遮ったのは、デボルとポポルでした。
デボルとポポルはストーリーの要所要所に出てくる人物です。
ニーアとヨナが住む村の長であり、ヨナを救うための手掛かりとなった「白の書」についての言い伝えの情報を喋った人物。そして、石の神殿の扉のことを知る人物です。
このタイミングで、デボルとポポルが人間ではなくアンドロイドだったということが白の書によって明かされ、デボルとポポルからは【ゲシュタルト計画】の全貌が明かされます。
ゲシュタルト計画とは
このストーリーの全貌を理解するために、まずこのゲシュタルト計画を説明します。
ニーアレプリカント本編から1400年前に、突如として不治の病が発生します。
突然、体が塩になり、死に至るという【白塩化症候群】です。
この白塩化症候群により、人類は絶滅の危機にさらされます。
これがゲシュタルト計画の発端です。
白塩化症候群による人類の絶滅を避けるためにゲシュタルト計画が実行されました。
分析、研究の結果、白塩化症候群は人間の魂までには効果を発揮しないことが分かりました。
そこで人類は、人間の魂と体を分離させるという新技術を開発。
それによって白塩化症候群をやり過ごそうとします。
しかし魂と体と別々になったところで、体の方は白塩化症候群で滅びてしまいます。
そこで「レプリカント」という白塩化症候群の脅威が過ぎ去った後に魂を宿すことができる「器」が用意されます。
この器は、白塩化症候群の脅威を排除するという機能も兼ねています。
そして白塩化症候群の脅威を排除するために、疑似的な人格が与えられます。
このレプリカントという器こそが、あのニーアであり、ヨナであり、ニーアレプリカントに登場する人物ほとんどだったのです。
ニーアレプリカントに登場する人物は人間ではなく、人間だと思い込まされたレプリカントだったということですね。
さて、人間だと思い込まされた白塩化症候群の脅威を排除するための器がレプリカントですが、レプリカントだけでは、レプリカントとしての生活をするだけで、人間の魂を戻す機能はありません。
人間の魂を戻すには別の存在が必要となります。
それがアンドロイド。
アンドロイドはゲシュタルト計画の監督者で、機械です。
アンドロイドには人間の魂を持つ器としての役割は無いので、魂を宿すことはできません。
その代わり、途轍もなく長い寿命を持ちます。
ゲシュタルト計画は、主にレプリカントとアンドロイドの2通りの存在で成り立つ仕組みとなっています。
レプリカントが白塩化症候群の脅威を排除し、その後、人間の魂を宿す役割。
アンドロイドが、レプリカントの行動を制限、監督して、白塩化症候群の脅威が去ったことを見極め、レプリカントへ人間の魂を宿す役割を担うという仕組み。
レプリカントを監督するアンドロイドという構図は、ニーアたちを導くデボルとポポルという構図と似ていますが、まさにその通りで、デボルとポポルがアンドロイドだったのです。
村の長としてレプリカントを監督するアンドロイドとしての役割を担っていたという事です。
ゲシュタルト計画の目的「白塩化症候群の脅威が去った後にレプリカントに人間の魂を宿す」という行為には、具体的には白の書と黒の書が必要となります。
二つの書の作用により、ゲシュタルト計画は最終的な成功を迎えるという計画です。
これらがゲシュタルト計画の全貌となります。
さて、ニーアを操作している自分を思い返せば、マモノ、デボルポポルが憎いとさえ思っていましたがこの背景を知るとどうでしょうか。
実は皆、ひとりひとりが各々の役割を全うしていただけで、誰も悪くない、憎めない世界だったのです。
絶望的なニーアレプリカントの世界と、それに連なるシリーズの世界
ここでニーアレプリカント本編のストーリーに戻りますが、ゲームをクリアした人は知っている通り、ニーアたちを遮ったデボルとポポルは敗北し、死亡。
魔王との決戦のさなか、白の書と黒の書は消滅してしまいます。
ニーアレプリカントとしてのエンディングは、この魔王との決戦の後に4通り、ないし5通りに分岐します。
ニーアとヨナがどうなるのか。カイネとエミール、そして魔王。それぞれの顛末が描かれて、ゲームは完全クリアとなります。
しかしどのエンディングであれ、白の書と黒の書消滅後の分岐なので、レプリカントに魂を宿らせることは不可能という結末しかないことが分かります。
ゲシュタルト計画に希望を託した人類のことを考えると…あまりに残酷な結末でした。
またレプリカントも、コピーの際のエラーにより結果として黒文病を患い死んでしまうので、いずれは全滅してしまうことが予想されます。
最後にはアンドロイドだけの世界となりますが、これがニーアオートマタの世界観となり、ニーアオートマタの世界と繋がっていくこととなります。
【おまけ考察】ドラッグオンドラグーンにも関連が…?
最後に、細かな違和感を感じる部分を考察していきましょう。
ゲシュタルト計画は、新技術によって人間の魂と体を分けることに成功した。というストーリーですが、いきなりそんな新技術が沸いてくるのは無理矢理ではないか。という違和感です。
これはじつは白塩化症候群の発祥とリンクしています。
白塩化症候群の発端となったのは、突如として新宿に現れた「巨人」が原因で、この巨人はドラゴンの存在する剣と魔法の異世界から来たものでした。
そして魂と体を分ける新技術は、巨人と共に現れたドラゴンを培養することで研究開発されたものでした。
これにより開発された「魔法」という新技術で、人類の科学技術は急激に発展し、魂の振る舞いを制御することも可能となった。ということです。
黒文病というレプリカントのコピーの際に出るエラーによって引き起こされる不治の病の存在から、やはり新しいだけに不完全な技術なのだろうという事も考察できますね。
新宿に現れた巨人やドラゴンについては、ニーアレプリカントより前に発売された「ドラッグオンドラグーン」というゲームにて、その詳細が分かります。
どういった世界で何をしていたのか、どうしてニーアレプリカントの世界に現れたのか。
気になる方はプレイをしてみてください。